歯科治療では、歯科医師の手だけでなく複数の器具が口腔内に入ります。治療する部位にもよりますが、口の奥まで器具を入れることも多いでしょう。嘔吐反射が強くでる事に悩まされている方にとって、歯科治療を受けることは非常に困難です。だからといって虫歯は自然治癒するものではありませんので、治療を受けなければならない時もあるでしょう。そんな時の対処法や、画期的な最新治療についてご紹介します。
嘔吐反射とは
一般的には「えずく」と呼ばれることもあるこの「嘔吐反射」とは、人間の防御反応の一種であり反応が起こることは自然な事なのです。喉の奥に異物が入った際、食道や気管に異物が入り込まないようにして生命を守るための働きです。
この嘔吐反射が過剰に出てしまうことを「異常絞扼反射(いじょうこうやくはんしゃ)」と呼びます。過剰な反射が起こる原因は人により様々で、実際に歯ブラシや歯科医療器具などが口腔内に入る「物理的な刺激」により起こる場合だけでなく、緊張やストレスなどの「心理的要因」が原因となることもあります。
また、過度な喫煙やアルコールの常飲などが原因となり口腔内や咽頭部の感受性が高くなりすぎてしまうことも考えられます。
他にも「歯科恐怖症」と呼ばれる種類の嘔吐反射も存在します。こちらは、過去の歯科治療で受けた体験からの恐怖心やトラウマといった精神的影響が大きいものです。過去に無理な治療を受けた際に嘔吐してしまった経験などから治療に対して過剰にストレスを感じ嘔吐してしまうのです。
歯科治療で発生する問題点とは
まず、治療を行う上で口腔内の状況を精密に検査する必要があります。レントゲンや肉眼で確認することや、細かい器具を使って口腔内をチェックしていきます。レントゲンを撮る際には、フィルムや専用の器具を口に入れて噛みこむ必要があり、口腔内のチェックの際にはミラーや端子・スリーウェイシリンジ(水や空気を出す器具)など複数の器具を使用します。これらができないと、どの部分に問題があり、その問題はどの程度の進行をしているのかを医師が正確に把握することができないのです。
また、治療の際には器具を使って患部を削ることもあるでしょう。削るための器具からは、削った際に発生する熱を抑えるための水が出ますので、口腔内に水が溜まります。それを吸い取るためのバキュームや、削った部分の型を取るための印象材を口に入れる必要がでてきます。
つまり、口腔内に人の手や器具・水が入ることなく歯科治療をすることはできません。嘔吐反射が出てしまう度合いにもよりますが、強い反応を抱えながら歯科治療をすることは患者さん自身にとって精神的にも身体的にも非常に負担が大きいのです。
個人の症状に合わせて対処法を取ってもらいましょう
過度な嘔吐反射といっても、一人一人症状は異なります。どのような状態が辛く、反射が出てしまうのかを医師と共にしっかりと見極めて、一番不可がかからずに治療を受けることができるようにしてもらうことが大切です。対処法としては以下のようなものがあります。
ユニットを寝かせない
治療を受けるために座る電動リクライニングチェアを「ユニット」と言います。このユニットの角度は医師の操作によって調節することが可能です。本来であれば、寝かせた状態で医師が上からのぞき込むようにして治療を行っていくのが基本ですが、嘔吐反射が激しく出る方には椅子を完全には寝かせないで治療を行います。寝かせてしまうと、口腔内に水が溜まりその影響で反射が出てしまうことが考えられるからです。ユニットを寝かさない分、こまめに口をゆすぐことにはなりますが、水が溜まらない・バキューム(口腔内の水を吸い取る器具)が入らないだけでも効果が出る方もいます。
小児用の器具を使用する
細かい部分を確認するためのミラーや、口腔内の型を取るための器具などには大人用と小児用があります。小児用は子供の顎に合わせて小さく作られているのですが、これを使用することもあります。大人用よりも小さいため、口腔内に入った時の異物感が多少でも和らぐでしょう。
口腔内や喉周辺を麻酔で痺れさせる
咽喉とよばれる喉の奥に物が触れることで反射が起こってしまう方が非常に多くいます。この症状を緩和させるために、喉の周辺にスプレータイプやジェルタイプの麻酔を行います。意識を失うことはなく、麻酔の効果もさほど強いものではありませんので効果には個人差があります。軽度の嘔吐反射であれば、この処置で反射を抑えることができるでしょう。
笑気麻酔
上記の麻酔とは少し異なる、吸引式の麻酔です。身体の緊張をほぐし精神をリラックスさせる効果があります。歯科治療が怖いという子供にも使用されている安全性の高い麻酔法です。精神的なストレスや不安からくる嘔吐反射の方であれば、この笑気麻酔が非常に有効的に働くでしょう。
静脈麻酔法
腕の静脈に鎮静剤(精神安定剤)を点滴し、治療を行う方法です。意識を失うことが多く、患者本人としては寝て起きたら治療が終わっているということになるので非常に楽に治療を受けることができます。ただ、一般の歯科医院では設備などの取り扱いがない場合もありますので希望される方は最寄りの歯科医院に問い合わせるか、大学病院などへの紹介状を書いてもらうと良いでしょう。
まとめ
嘔吐反射が過度に出てしまうという方は、申告することで迷惑がられるのではないかという心配や、恥ずかしさから申告したくないという理由で歯科医院に何年も通っていないという方が多くいらっしゃいます。歯科医師や歯科衛生士は、嘔吐反射に関してしっかりと学生時代に学んでおり、治療時に反射が出てしまう方がいることを認識しています。そのため、申告をしてもらえれば反射の度合いに合わせた対応を取ってもらうことができるでしょう。
過度に反射が出てしまうという方は決して少なくありませんので、歯科医院としても珍しいとは思わないでしょう。安心して歯科治療を受けられる医院を探して、口腔内を清潔に保つようにしてください。
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